遺言書を作ることを考えています。どのような準備と段取りが必要でしょうか。

次の準備と段取りをしましょう。

①相続財産に何があるのかを書き出す。
②相続人が誰かを明確にする。
③遺言の内容を決める。
④遺言の形式を決める。

①相続財産に何があるのかを書き出す。

相続財産をすべて書き出すことなく遺言書を書いてしまうと、遺言によって処理される財産と、遺産分割協議によって処理される財産(遺言書に記載が漏れている財産)が分かれて、相続手続きの手間が増えてしまいます。
遺言書に記載された以外に相続財産がある場合、相続人がその財産を探しきれないということも考えられます。

遺言書がなく相続人間で遺産分割協議をしなければならないケースでは、相続人に何らの情報もないと相続財産を調査するのは非常に大変です。仮に相続税の申告が必要な場合には、相続が開始したことを知ってから10か月以内という申告期限がありますので、期限に追われる大変さも増します。

遺言書を作るかどうかに関わらず、生前整理ノート(エンディングノート)などに具体的な相続財産(例えば、土地、建物、預貯金、有価証券、骨董品、ゴルフ会員権など)を書き出しておきましょう。

②相続人が誰かを明確にする。

相続人であるのに、その相続人には相続分がない遺言内容になっている場合、相続開始後に相続人間で遺留分(相続人に最低限保障されている遺産取得分)侵害額請求というトラブルに発展する可能性があります。

相続人は民法に基づいて決められますが、特に、下記の方たちがいらっしゃるのか、いらっしゃらないのか見逃さないようにしてください。

①代襲相続人(本来相続人となるはずであった人が相続開始前に死亡や欠格事由、廃除などにより相続権を失った場合に、その人の子などが代わって相続人となる制度)

②非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子、つまり婚外子)

③前の配偶者との子

③遺言の内容を決める。

具体的に「誰に何を相続させるか」(相続財産の分配)を決めましょう。

遺言では、相続人以外の人に相続財産を渡す遺贈、公益法人への寄付なども可能です。

また、子の認知、未成年後見人の指定、相続人の廃除やその取消し、遺言執行者(遺言に書かれた内容に基づく事項を執行する人)の指定なども遺言書に記載できます。

遺言内容が明確でないと、せっかく作った遺言書が無効になる可能性があり、結局、相続人間で遺産分割協議を行わなければならなくなります。

④遺言の形式を決める。

一般的に使われている遺言の形式は、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言は、遺言書を自分で保管する場合と、法務局で保管する場合に分けられます。

自筆証書遺言と公正証書遺言の概要は下の表のとおりですので、参考にしてください。

まとめ

遺言書は、法定相続分にとらわれないで、誰にどのような財産を承継させるのかを、亡くなる前に決められる意思表示です。遺留分に配慮した遺言内容であれば、相続争いを防ぐための大切な手段になると言えます。

遺言書を作った後に事情が変わり、遺言がふさわしい内容ではなくなったと思ったときは、亡くなるまでは遺言書の修正や撤回は可能です。つまり、遺言書のメンテナンスはできるということです。

望ましい遺言書を作るには準備と段取りが不可欠です。特に、自筆証書遺言書を作るのであれば、法的要件を備え、遺言内容が明確でなければ、せっかく作っても無効なものになってしまう可能性があるので、十分に留意したいところです。
遺言書を作る過程で分からないことがあれば、士業などの専門家に相談されることをお勧めします。