自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて教えてください。

自筆証書遺言は、法務局への保管制度を利用するか否かで違いがあります。

自筆証書遺言と公正証書遺言の主な違いを下表のとおりまとめましたので、参考にしてください。

自筆証書遺言と公正証書遺言の作成件数について教えてください。

令和4年(1年間)における作成件数については、以下のとおりです(法務省及び最高裁の統計による)。

①法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は、16,802件

②法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は、20,500件(家庭裁判所が取り扱った検認件数により算出していることから、実際にはもっと多くの方が作成している可能性はあります。)

③公正証書遺言は、111.977件

自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選択すべきでしょうか。

公証人(裁判官や検察官を努められた法律の専門家)が関与して作成した公正証書遺言は、銀行における相続手続や、法務局における不動産の相続登記手続の段階で遺言書が使いものにならないという事態はほぼ生じないといえます。また、遺言書の保管は公証役場で行うことになりますので、紛失の心配もないといえます。ただし、自筆証書遺言と比べて費用がかかるというデメリットはあります。

一方で、自筆証書遺言は、法務局の保管制度を利用すれば費用は安く済むこと、法務局で遺言書を保管してくれることから紛失の心配はないといえます。また、法務局に遺言書を保管してもらう際に、遺言者が亡くなった後に相続人等への通知依頼をしておけば、亡くなったときに法務局から相続人等に遺言書を法務局で保管していることが通知されるというメリットがあります(公正証書遺言にはそのような制度はありません。)。
ただし、法務局に保管する際に、法務局担当者が自筆証書遺言の記載の形式面は見てくれるものの、遺言内容の有効性まで判断するものではないということは理解しておきたいところです。

前回のブログで、ご紹介したように、三菱UFJ信託銀行の相続センターに提出された自筆証書遺言の概ね8割が相続手続に使えないものだそうです。遺言の有効性及び実効性の観点からすると、費用はかかっても公正証書遺言を選択する方がベストであるように思います。

しかし、上記のとおり、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言のメリットを考えると、遺言書が絵に描いた餅にならないように遺言の有効性及び実効性確保のためには、士業などの専門家に記載内容等をチェックしてもらったうえで、法務局の保管制度の利用を選択してもいいように思います。今後、同制度の認知度が高まっていけば利用される方が増えていくのではないかと感じています。