NHKの朝ドラ「虎に翼」で遺産分割調停で揉めている場面を見ました。相続で揉めないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。
相続では、遺言書がないと、相続人間で遺産をどのように分けるかを話し合う場面(遺産分割協議)で揉めるということは想像がつくと思います。
NHKの朝ドラ「虎に翼」で相続人間で揉めている場面を見られた方は多いのではないでしょうか。私は、裁判所書記官をしていましたので、実際に相続人間で揉めている場面は何度も見ていますし、珍しいことではない感覚で見ていました。
遺産分割協議で揉める可能性のあるパターンはいくつかありますので、それに当てはまる人は、遺言書を作成しておくことが良いと思います。
相談者の中には、以下のパターンに当てはまり、揉める可能性を感じて相談に来られる方は多くいます。
①子どものいない夫婦の場合
子どもがいない場合、財産は「配偶者と義父母(義父母がいない場合は、配偶者と義理の兄弟姉妹)」に相続されます。配偶者が義父母や義理の兄弟姉妹と遺産分割について突っ込んだ話し合いをするのはなかなか難しいのではないでしょうか。仮に、相続財産が不動産だけの場合、配偶者は家を売却しないと相続分を払えない危険性があります。義理の兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言書に財産のすべてを配偶者に相続させると書いておけば配偶者を守ることができます。
②元妻(夫)との間に子どもがいる再婚夫婦の場合
このパターンの相談者は非常に多いです。元妻(夫)との間の子どもは相続人になります。遺産分割協議では、まったく会ったことのない子どもであっても会って話し合わなければならず、心理面で相当の負担があると思います。不動産の名義変更や銀行口座解約などの相続手続は、すべての相続人から遺産分割協議書への押印をしてもらわない限り進められません。遺言書で相続人を指定しておけば、元妻(夫)との間の子どもに連絡が取れなくても相続手続は進められます。
③絶縁状態または音信不通の子どもがいる場合
まったく連絡がとれない子どもがいる場合、相続の手続(銀行口座の解約、不動産の名義変更)が進みません。後から遺留分を請求される可能性はありますが、まずは手続を優先させるために遺言書を作成しておきましょう。
④相続人同士が不仲の場合
揉める可能性は高いので、遺留分を侵害した遺言書にならないように、財産を把握してから、遺言書を作成しておきましょう。
⑤配偶者が認知症の場合
相続人が認知症だと、成年後見人を付けない限り、遺産分割協議書も名義変更もできません。他の相続人(子ども)に認知症の配偶者の面倒を見てもらう内容にして、認知症の配偶者以外に相続させる遺言書を作成しておきましょう。
⑥内縁の妻(夫)がいる場合
内縁の妻(夫)は、基本的には相続権がありません。一緒に暮らした自宅も、法定相続人に相続されてしまいます。遺言書を作成して、財産を残してあげるようにしましょう。
⑦法定相続人以外に財産を渡したい場合
子どもの妻が熱心に介護をしてくれたとしても、子どもの妻は法定相続人ではないので相続権はありません。感謝の気持ちで財産を残してあげたいのであれば、遺言書を作成して財産を残してあげるようにしましょう。
⑧事業や農業を営んでいる場合
事業承継を円滑に進めるためには、生前に相続人たちと話し合って相続の方向性を決めておくことがベストですが、これができそうにない場合は、専門家の意見を聞いて遺言書を作成しておきましょう。