亡くなった父が上場株式212株を保有していることがわかりました。その相続手続について教えてください。

実際に行った相続手続をご紹介します。相続人は妻、長男、長女の3人です。

株式名簿を管理する信託銀行から送付されてきた「配当金振込通知書」を相続人が見て、父が上場株式を保有していたことがわかった事例です。調査した結果、保有している株式は1社212株だけでした。

本事例の一般的な相続手順は、①信託銀行の相続手続窓口に連絡して、手続書類を取り寄せる、②戸籍等の必要な書類を収集する、③残高証明書の請求を行い、相続の対象となる株式の保有銘柄や数量を確認する、④相続人間で遺産分割協議を行い、どのような割合・方法で相続するかを決める(遺言書によって相続する場合は不要)、⑤相続人名義への移管を希望する場合は、あらかじめ証券会社の口座を開設しておく(すでに口座を持っている場合は不要)、⑥信託銀行所定の用紙に相続人全員で署名、押印して必要書類ととも信託銀行に提出する、という流れになることを説明しました。

相続人全員は、株式に興味はないので、売却して代金を受け取ることはできないのですか。

上場会社は100株に満たない株式(単元未満株(端株ともいいます))については、相続人名義の証券口座の口座に移管して受け取る方法のほかに、買取請求をして買取代金を受け取るという方法も選択できます。

そこで、信託銀行と調整し、相続人の意見を聞いたうえ、相続する株式の割合を単元未満株となるように、妻62株、長男75株、長女75株として遺産分割協議書を作成し、買取請求の手続をして、買取代金を受け取ることとしました。

今回の相続事例は、単元未満株として買取請求ができたのですが、株式数によっては、相続人名義の証券口座を開設(口座がない場合)して、その口座に移管して株式を受け取り、その後、相続人が売却手続を経なければ代金を受け取れないという面倒な手続を取らざるを得ないことになります。

いずれにしても株式の相続は、手続が複雑で時間がかかりますし、株式も相続税課税の対象財産になり、また、売却した場合に譲渡益が出ていれば確定申告が必要になる場合もありますので、専門家に相談された方が良いと思います。

株式の相続で他に留意すべき点はありますか。

株式で配当金が出ていて、未受領の配当金がある場合(直近に配当金を受領していて、未受領配当金はないと推察できるような場合も念のために)、遺産分割協議書に未受領配当金をだれが取得するかについても記載しておくと良いです。株式の相続と配当金の相続は手続が異なりますので、留意しましよう。未受領配当金の取得については、割合で分割するのではなく、相続人の内の1人が取得するとして遺産分割協議書に記載しておく方が手続的には楽です。