遺留分を侵害する内容の遺言書は争いの火種になると聞きました。法定相続分と遺留分について教えてください。

法定相続分は民法900条に、遺留分は民法1042条にそれぞれ規定されています。それらの割合は、下図のとおりとなっています。

遺留分というのは、残された一定の相続人(遺留分権利者)の生活を保障するための、最低限の金額の取り分のことで、これは権利です。

例えば、被相続人(亡くなった人)が父、相続人が妻、長男、二男の3人として、遺産が1億円とすると、妻の法定相続分は2分の1で5000万円、長男及び二男の法定相続分はそれぞれ4分の1で各2500万円ということになります。

次に遺留分を算出すると、妻は、遺留分割合は2分の1ですから、法定相続分5000万円の2分の1で2500万円となります。また、長男及び二男は、それぞれ遺留分割合は2分の1ですから、法定相続分2500万円の2分の1で各1250万円ということになります。

仮に、遺言書に、二男には500万円を相続させるとして、二男の遺留分額を下回る内容であった場合、二男がそれを受け入れ、相続人3人が合意するのであれば問題はありません。しかし、二男が納得せずに、相続人間では話し合いがつかない場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停手続の申立てに至る可能性も出てきます。

せっかく作った父の遺言書の内容が原因で相続人が争族人になってしまうこともあるということです。

遺言書を作る場合、遺留分の他に気を付けるべきことはありますか。

基本的には法定相続分を意識して作ることをお勧めします。ただ、不動産、高価な貴金属類、株などの資産を持っておられる方は、相続開始時の各資産価値の算出方法によって資産総額は大きく変わってくる可能性がありますので、法定相続分になるように分ける遺言書を作るといってもなかなか困難といえるかもしれません。また、相続人が内心欲しいと思っている資産があり、それと違った内容となっている場合も紛争につながる可能性はあるかもしれません。

遺言書をせっかく作るのであれば、相続人が争族人とならないように、相続人となる方たちの考え方をある程度把握するために、可能であれば相続について会話する機会を設けてもいいのではないかと思われます。それをヒントにして遺言書に取りまとめていくことで、紛争を回避できるかもしれません。
私には妻、娘2人がいますが、相続のことでガッツリではありませんが会話をしたことがあります。それぞれの考え方がある程度わかり、気づきになった経験があります。特に妻の考えを聞いたときはなるほどなと思いました。

仮に、ご自身の判断だけで遺言書を作られる場合、最低限遺留分を侵害しない内容にすること、遺言書の本文の最後に「付言事項」として、遺産の配分方法や割合を定めた経緯や、家族に対する感謝の気持ちなどを書くことによって、相続人の不満が解消されることも少なくないと思われますので、付言事項の記載を検討されてもいいかと思います。ただし、記載内容によっては逆効果になる場合もありますので、相続人がこれを読んだらどう思うかを考えながら検討していただきたいと思います。

遺言書の記載内容については、その他にもいろいろ留意すべき点はあります。今後も随時ブログにアップしていきますので、ご閲覧いただけると幸いです。