遺産分割協議における土地の評価額の基準があれば教えてください。
土地の評価額の種類は概ね以下のとおりですが、遺産分割協議においてはどの評価額を基準にすべきという決まりはありませんので、相続人間の話し合いで相続した土地の価格を決めることになります。
①実勢価格(売却相場)、②公示価格(国土交通省が発表する毎年1月1日時点の標準地1㎡あたりの価格)、③路線価(国税庁が発表する毎年1月1日時点の路線(道路)に面する土地1㎡あたりの価額)、④固定資産税評価額(国が定めた固定資産評価基準にもとづいて市町村が決定する価格(3年ごとに見直し))、⑤基準地価(各都道府県が発表している毎年7月1日時点の基準地1㎡あたりの価格)、⑥不動産鑑定評価額(不動産鑑定士が経済価値(適正価値)を鑑定した価額)
土地の売却相場である価格(時価)と相続税評価額で大きな差が生じるのでしょうか。
結論は以下のとおり差が生じます。
相続税評価額は、国が定めた路線価方式で算出します。路線価方式とは、日本の主な市街地の道路一本一本に値段(路線価)を振り、その道路に接している土地の面積(1㎡)×路線価をすれば、相続税評価額を算出できるというものです(ただし、土地の形状等で評価額が補正等される場合があります。)。また、路線価が設定されていない地方では倍率方式で相続税が評価されます。
この相続税評価額は、実際の売却相場である価格を10とすると、相続税評価額は8割程度と言われています。路線価は年に一度しか更新されませんが、土地の時価は1年間でも大きく変動する可能性があります。国が実際の時価よりも高い評価額で課税をしてしまうと、納税者から相続税が高すぎるということで相続税過払いの訴訟を起こされる可能性がありますので、それを避けるために実際の価格よりも低めに路線価を設定しているということです。
ちなみに、固定資産税評価額については、土地の場合は時価の6割~7割になっていると言われています。
相続人間の話し合いではもう遺産の評価額が決まらないような場合はどうしたらいいのでしょうか。
相続人間でもめにもめて紛争状態になっていたら、もう弁護士に相談するか、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになろうかと思います。弁護士に中に入ってもらっても、双方がまったく譲らない場合は結局遺産分割の調停の申立てに至ると思われます。調停で話し合いがつかなければ、家庭裁判所の審判手続に移行します。
紛争事例として紹介します。
父が亡くなり、母に土地建物(実家)が相続され、その後、母と二男が実家で同居していたところ、母も亡くなり、自宅を保有する長男と二男が遺産分割でもめることになりました。
二男はこの先も実家で暮らしたいという思いが強かったことから、実家を自分が相続し、母の遺産である預貯金(500万円)はすべて長男に相続させる案を提示しました。
それに対して、長男は、実家を二男が相続することには同意しましたが、自分が相続する預貯金よりも実家の価格の方が高いはずだから、法定相続分の2分の1ずつの遺産分けになるように二男に対してお金を支払うように主張しました。
その後、実家の価格をいくらと考えるかについて双方の主張がなかなか折り合わず、双方がそれぞれ別の不動産鑑定士に鑑定を依頼することになり、最終的にその二つの鑑定評価の中間値の価格とすることで合意ができ、二男が自己資金を長男に支払うことで遺産分割協議がまとまりました。仮に、二男が長男に支払えるような資金がなければ、二男にとって愛着のある実家を売却してその代金を分け合うことになったかもしれません。
このように不動産の相続では、もめる場面が少なくありませんので、できれば被相続人が生存中に相続人となる方たちと遺産分けについて意見交換をして、相続人がなるべくもめないように生前の対策をしたうえで遺言書を残すことを検討してもいいかもしれません。