円満相続の「3つコツ」
先日、円満相続税理士法人代表橘慶太著「ぶっちゃけ相続(増補改訂版)」を読みましたが、一般の方にもわかりやすく書かれており、大変参考になりました。
同書の中に表題テーマのコツが書かれており、それをご紹介したいと思います。
①家族会議で相続後の方針を明確にする。
相続が発生する前に、家族会議で相続の方針を明確にしておくことが円満相続実現に最も効果的ということが書かれています。
私が受ける相談内容としては、ご自身の財産をだれにどのように分けるかというお気持ちはある程度決まっており、それを実現するための手続や問題点を聞いて来られる方が多いように感じます。その際には、法定相続分と遺留分、相続税の説明をしてから、相続人となられる方たちと相続についてなんらかお話はされていますかとお聞きすると、ほとんどの方はしていないと言われます。
私もそうですが、親の多くの方は、家族で相続の話をすることに躊躇を感じているように思います。中には、「相続なんて縁起の悪い話をしたくない」、「相続税だって、遺産の中から払えばいいだけじゃないか」、「私が死んだ後のことは知らん、遺産はみんなで話し合って分ければいいことだ」と相続の話を極端に嫌う方がいます。確かに自分が死んだときの話は気持ちの良いものではないかもしれませんが、人はいつか必ず天国に旅立つときが訪れます。
一方で、相続人となる方(子供の立場)から、家族間で揉めたくないから、父に遺言を書くなど、相続の準備をするように伝えてくれませんか、という相談を受けることもあります。
家族間で相続について話せるような関係性であるならば、子供からはなかなか切り出せないので、できれば頑張って意識を変えて、親の立場から相続の話を切り出し、円満相続の観点から家族会議の機会を持つことは大変有益なことと感じます。
②現状分析と問題点を把握する。
遺産の分け方を決める前には、まず、どれくらいの財産があるのかを把握することが大事ということが書かれています。
財産把握をすることはもちろんのことですが、相続税申告の財産額となるかも把握しておかないと、相続税は遺産の分け方次第で何倍にも変わる税金であることから、気持ちだけで分け方を決めるのは危険ということです。不動産(土地)の所在地や面積などによっては評価額がとても高くなる可能性がありますので、この点は税理士などの専門家に相談することが大事になると思います。
③相続人間での秘密は極力避ける。
よくあるケースとして、他の相続人には秘密にして生前贈与をする、特定の相続人を生命保険の受取人に指定し、そのことを他の相続人に秘密にしていることなどが後々に発覚して紛争に発展する可能性があるということが書かれています。特に、相続税申告事案ですと、申告書には、相続が発生する前3年以内に行われた生前贈与や、生命保険金の受取人とその金額をすべて記載することになることから、相続人間で知れてしまうということです。
高齢者の方と相続についてお話をしていると、年長の男性(長男)が跡継ぎという家父長制の意識が潜在的にまだあるように感じるときが多々あります。私としては、その考えを否定するつもりは毛頭ありませんし、生命保険金の受取人を長男にするなど他の子供と差異を設けることも理解できるところです。
ただ、現在の子供たちは相続についての最低限の知識は有していますので、相続開始後、相続分に差異のある遺言書を見たり、一定の子供にだけ生前贈与していたことを知れば、正直不満を持つと思います。親がしたことだからと腹に収めるとしても、以後、相続人たる兄弟姉妹がぎくしゃくした関係になるかもしれません。
いずれにしても、親としては、透明性の高い、また、納得性の得られる相続対策を目指し、①の家族会議で話し合う機会を設けることが円満相続の一番のコツであるように感じました。