日本で遺言書が作成される件数はどれくらいあるのでしょうか。

日本の各機関で公表されている統計数値(令和4年分)を調べたところ以下のとおりでした。
① 公正証書遺言の作成件数(日本公証人連合会統計)                   
  111,977件
② 法務局への保管制度を利用した自筆証書遺言の作成件数(法務省統計)      
  16,554件
③ 家庭裁判所に申し立てられた自筆証書遺言(法務局への保管制度を利用していないもの)の検認件数(最高裁判所司法統計)
  20,500件
以上の①から③の合計は、149,031件となりました。
ただし、この数値には表れない遺言書の作成もあるでしょうから、確定的な数値とは言えないですが、遺言書が作成された件数の目安にはなるのではないかと思われます。

外国と比較すると日本での遺言書の作成割合はどうなんでしょうか。

アメリカでは、保有する財産に基づいて人生の節目ごとに遺言を書き換えることがよく行われているそうで、約50%超の人が遺言書を作成しているようです。また、イギリスでは、55歳以上の約60%超が遺言書を作成していると言われています。

一方で、日本での遺言書の作成割合は10%に満たないようです。
ただ、日本と他国との相続法制度には違いがあるので、単純比較することは相当ではないのかもしれませんが、日本の遺言書の作成割合は決して高いとは言えない状況にあるのではないでしょうか。

ちなみに、令和4年の日本の死亡者数は1,568,961人で、うち、65歳以上の死亡者数は1,439,437人となっています(厚生労働省統計)。

遺言書は作った方がいいのでしょうか。

私は、裁判所勤務時代に遺産分割の紛争事案に携わった時に、相続人である当事者の方から、「遺言書を残してくれてたらここまでの揉め事にはならなかったのに‥‥」ということを聞いたことがあります。相続争いの原因はいろいろあると思いますので、遺言書があるからといって必ずしも相続争いにはならないとは言い切れないかもしれませんが、疲労困憊した当事者の方の重みのある言葉は今も耳に残っています。

次回以降のブログでは、裁判所に申し立てられた遺産分割等事件(調停・審判)の統計数値を調べて、相続争いがどれくらいあるのか、遺言書があることが相続争いの予防につながるのかなどを考えていきたいと思っています。