日本には無戸籍児の問題があると聞きましたが、それはどういうことですか。
現行の制度では、婚姻の成立した日から200日を経過した後に生まれた子又は離婚等により婚姻を解消した日から300日以内に生まれた子は嫡出子(ちゃくしゅつし)の推定を受けるとなっています。よって、離婚から300日以内に生まれた子の出生届を出す場合、父親欄に前夫の名を書くことになります。
嫡出子とは、婚姻関係にあるときに懐胎・出生した子のこといいます。上記のように300日以内に生まれた子は、すでに離婚している時に生まれているので嫡出子とはいえませんが、法律上、前夫の子、嫡出子としての推定を受けてしまうのです。
離婚から300日以内に生まれた子であっても前夫の子であるとは限りませんし、出産した女性からすると、前夫が父親となる戸籍が作成されるのを嫌って出生届を出さないという方がいることも原因の一つになっていると言われています。
問題の解決のために嫡出推定の規定を改正すればいいのではないですか。
令和6年4月1日から、離婚の解消等の日から300日以内に生まれた子については、前夫の子と推定するとの原則は維持されますが、300日以内に生まれた子であっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫の子と推定するとの改正がされたことから、再婚後の夫を父とする出生の届出が可能となります。
改正法では、原則として、令和6年4月1日(施行日)以後に生まれる子に適用されることになります。
前夫との嫡出推定を覆す方法はないのですか。
現行民法では、嫡出子の推定が及ぶのを覆すには、嫡出否認の訴えを提起して裁判所が判断することになります。その訴えを提起できるのは、夫のみと規定されています。
これも今回の改正により、子及び母も嫡出否認の訴えを提起できることとなります。
また、現在、嫡出否認の訴えの提起ができる期間(出訴期間)が1年であるのが、今回の改正により、3年に伸長されます。
女性の再婚禁止期間が廃止されると聞いたのですが。
以前は、女性については離婚後6か月の再婚禁止の制約がありましたが、平成27年に最高裁によって違憲判決(100日を超える部分は違憲)が出たことから、民法が一部改正され、現在は、再婚禁止期間は100日となっています。
令和6年4月1日からは、上記のとおり嫡出推定の規定が改正されるに伴い、女性についての再婚禁止期間を設ける規定は削除されることになりました。
近時、私人間の権利や義務の関係性をまとめた基本的な法律である民法が大きく改正されてきており、現在は親子法制の関係で大きな改正点が議論されているようです。今後も適宜情報をアップしていきますので、参考にしていただけると幸いです。