遺産分割協議書について

遺言書がない場合、相続人たちは遺産をどう分けるかを話し合う「遺産分割協議」を行います。その協議で誰がどの財産を相続するかを合意した結果をまとめた書類が、「遺産分割協議書」です。この遺産分割協議書がないと、遺産である不動産の名義変更、預貯金の名義変更、解約、払戻などの相続手続が進まなくなってしまいます。

相談者から、遺産分割協議書について、「様式は決まっているのですか」「書き方は決まっているのですか」「書き方を教えてほしい」という質問をよく受けます。結論としては、遺産分割協議書の様式や書き方に法的な決まりはありませんが、内容に不備があると相続手続に使えなくなってしまいますので、書き方のポイントを押さえておくことが大切です。
以下に遺産分割協議書のひな形を掲載しましたので、参考にしてください。

遺産分割協議書作成上の注意点について

ひな形にある注1について、不動産の表記は、登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局から取得し、同証明書のとおり記載しましょう。

注2及び注3について、通帳があればそれに基づいて記載しましょう。普通預金(通常貯金)以外に定期預金(定額貯金)などの権利や、知らなかった休眠口座が見つかる場合もあることから、記載漏れのないように銀行から残高証明書を取得すると確実です。

なお、信用金庫は、出資金(預金とは違う性質を有する)がありますので、記載漏れをなくすために「〇〇信用金庫〇〇支店の預金、出資金、その他一切の権利についは、〇〇〇〇が取得する。」とすることも考えられます。

注4について、遺産分割協議書を作成して相続手続をした後に、新たな遺産が発見されることもあり得ます。その場合、改めてその遺産について誰が取得するかを協議して遺産分割協議書を作成することになりますが、当初の遺産分割協議書の中に誰が取得するかを決めて記載しておけば改めて遺産分割協議をする必要はなくなります。したがって、遺産分割協議書に記載された以外の遺産はないことが確実であれば、注4の条項の記載は必要ありません。

注5について、遺産分割協議書はパソコンで作成してもかまいませんが、作成者は「相続人全員」なので、全員による署名押印をしましょう。また、押印する印鑑は「実印」を使いましょう。

最後に、遺産分割協議書が複数ページに及ぶ場合には、ページの間に契印(割印)をしましょう。契印(割印)も相続人全員が実印で行いましょう。

ひな形は、定型的によくある遺産を記載したものですが、実際の相続事例では遺産の種類はさまざまであり、また、遺産分けの仕方も定型的な事例ばかりではなく、記載に迷うことがあると思います。迷われた場合は、士業など専門家に相談することをお勧めします。