人間関係が円満な家族ほど陥りやすい相続の落とし穴の事例について
実際にあった事例ですので、ブログに記載することについては相続人の方からご了解をいただいています。
お父様が亡くなり、相続人がお母様、長男さん、長女さんの3人の事例です。
相続人の確定、相続財産の調査も終わり、いよいよ遺産分割の話し合いになりました。みなさん優しいお人柄で、長男さん、長女さんは、すべての相続財産をお母様が相続するという意見に、お母様もありがとうと頷いておられました。
法定相続分や遺留分の説明をしましたが、3人の意向は変わりませんでした。相続財産は相続税申告が必要な額ではなく、お母様は結婚以来ずっと専業主婦であったこともあり、お母様がすべて相続するとの遺産分割協議書を書き始めたのですが、一応、お母様の資産も調べておこうと思ってお母様にお聞きしたところ、かなりの資産をお持ちであることがわかりました。
このまま遺産分割協議書を作っていいのだろうか?
お母様は90歳を超えておられますが、判断力はしっかりしておりお元気な方でした。
お父様の財産の多くをお母様が相続するとしたら、次にお母様が亡くなった時には相続税申告の事案になることは明々白々でした。
3人の合意はできているので悩みましたが、次にお母様が亡くなった時の相続のことをお話して、次の3つの遺産分割協議案を提示させていただき、あとは3人でどれにするかを決めてくださいとお伝えしました。
① お母様がすべて相続するというもの
② 法定相続分で相続するというもの
③ お母様には遺留分(法定相続分の2分の1)を相続し、残りは長男さん、長女さんで半分ずつ相続するというもの
3人は悩まれたようですが、結果として③を選択されました。
その理由をお聞きしたところ、長男さん、長女さんもお母様の資産がどれくらいあるのか知らなかった、お母様の相続分は少なくなったとしても、長男さん、長女さんはお父様から相続した資産はお母様になにかあったときのために使うから心配しないでとお母様に伝え、お母様も快く合意してくれたとのことでした。
遺言書を書かれる場合にも留意したいところですね。
自分で遺言書を書こうと思っている方から相談を受けたときに、長く連れ添った妻には迷惑もかけたし、世話になったから、妻にすべて相続させたいと思っている、子供たちにはいずれ妻が亡くなったら自分の財産を相続することになるから、というお話をお聞きすることがあります。そのとき、奥様の資産はどれくらいあるかお聞きしても知らないという方が多いです。
私は、相談者の奥様を想われるお気持ちは素晴らしいですとお伝えした上で、奥様と話し合って、次に奥様が亡くなった後の相続のこともお考えになってお決めになったらいかがですかとお話するようにしています。
次回以降もブログを読んでいただける皆さんに参考となる情報をアップしていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。