成年後見制度の利用者数について教えてください。

令和4年1月から12月までの1年間において、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見を含む)の利用者数は合計で245,087人です。

令和3年の利用者数の合計は239,933人、令和2年の利用者数の合計は232,287人、令和元年の利用者数の合計は224,442人となっていて、年々増加していることがわかります。これらの数値は、全国の家庭裁判所において審判がされた合計数です。

厚生労働省の発表によると、平成24年の認知症有病者数は462万人であり、令和7年には認知症有病者数は約700万人になると推計されています。厚生労働省の数からすると、判断能力が低下していても成年後見制度の利用がされていない人が多くいることが推察されます。

成年後見制度の利用の申立てに至った動機(きっかけ)はどういったことなんでしょうか。

申立ての動機(きっかけ)で一番多いのが、預貯金等の管理・解約のためです。以下、身上保護、介護保険契約、不動産の処分、相続手続、保険金受取、訴訟手続等の順になっています。

預貯金等の口座を持っている方の判断能力が低下していることを銀行に知られ、口座を凍結されて成年後見制度を利用しなければならなくなったというのが一番多いということのようです。

認知症と診断されても銀行に知られなければ口座は凍結されないということですか。

認知症と診断されても銀行に通知される制度というのはありませんから、ご家族等からの情報提供や何らかのきっかけで銀行が情報を入手しない限り口座が凍結されることはありません。よって、認知症と診断された父がいても家族がキャッシュカードを管理して暗証番号を知っていれば出金ができることから、成年後見制度の利用をしない(したくない)家庭が多いのではないかと思われます。

仮に、父のキャッシュカードを家族が使って出金する対応をしているならば、相続開始時に相続人となる方たちの間で紛争とならないように、最低限、父のために使ったことが分かるように帳簿を付けて領収書を取っておかれると良いと思います。

それでも相続人となる方たちの間で争いが生ずる可能性があると考えられるならば、法定後見・任意後見の制度の利用を検討された方が良いと思います。

現在、成年後見制度や遺言制度の見直しが検討されていると聞きましたが、どのように変わるのでしょうか。

成年後見制度は、後見人が財産管理や契約を行う制度ですが、一度利用すると、原則として途中で止めることができず、後見人が専門家の場合は、報酬を払い続けなければいけないため、負担が重いという指摘が出ています。これに対して、現在、法務省法制審議会において、支援を受ける期間を限る「期間制」の導入や、状況に応じて後見人を交代できるようにすることなどが検討されているようです。

また、遺言制度は、現在は全文(財産目録部分を除く)と氏名、日付を手書きする必要がありますが、デジタル技術を活用して作成できるよう見直すことについても検討されるようです。

上記の見直しについて、法律の改正時期は未定ですから、当分の間は現状のままということになりそうです。

認知症と診断されてからの対策というのは限られてきますので、将来に不安を感じている方は判断能力のあるうちに、専門家に相談して、家族の方との財産管理委任契約、任意後見契約、家族信託などの制度の利用を検討されても良いと思います。