相続手続でどうして戸籍が必要になるのですか。

相続手続を進めるためには、被相続人(亡くなった方)の出生から亡くなった時までの戸籍が必要になるということはよく耳にすると思います。戸籍というのは、国民の一人ひとりの出生から死亡までの履歴が記載されるものです。よって、被相続人の、法定相続人の範囲を確認するためには戸籍を見る必要があるのです。
ちなみに、現在、戸籍制度がある国としては、日本、中国、台湾の3か国のみです。その他欧米などでは、一般的に個人単位による身分登録制度をとっています。

日本における戸籍の種類を教えてください。

①現在戸籍

 現在戸籍(現行戸籍、コンピュータ(電子)化された戸籍とも呼ばれます)とは、現在在籍している人がいて使用されている戸籍のことをいいます。戸籍筆頭者の本籍地にあたる市町村の戸籍簿に綴られて保管されています。

②除籍

 除籍には、個人の除籍(一部除籍とも呼ばれます)と、戸籍そのものの除籍(全部除籍とも呼ばれます)の2つの意味があります。

個人の除籍とは、死亡や婚姻、離婚などの事由で戸籍から除かれることを指します。コンピュータ(電子)化されている現在の戸籍では個人の身分事項欄に「除籍」と印字され、紙の戸籍では名の欄に消除線が引かれます。

戸籍そのものの除籍とは、戸籍に在籍していた全員が死亡や婚姻、転籍などで除籍になり誰もいなくなった戸籍を指します。この場合、戸籍の一番最初の欄外に「除籍」と表示されます。全員が除籍になった戸籍は除籍簿と呼ばれます。

③改製原戸籍

 改製原戸籍(かいせいはらこせき)とは、戸籍法の改正により戸籍が作り直された際に、元となった古い戸籍のことをいいます。

 戸籍の改製の歴史は以下のとおりです。各年式の戸籍のイメージ画像を貼り付けました(昭和23年式の現行戸籍は省略)。

 ・明治19年式(家単位に戸主を中心としてその直系・傍系の親族が一つの戸籍に記載されたもの)

 ・明治31年式(戸籍の1枚目の表面に「戸主なりたる原因および年月日」の欄をもうけたもの)

 ・大正4年式(戸主となりたる原因および年月日)の欄が廃止され、戸主の事項欄に記載されたもの)

 以上は、戦前戸籍と呼ばれ、一家の代表者であり権限者である戸主を中心とした「家制度」に基づいて戸籍が編製されていました。

 ・昭和23年式(戸籍の記載事項が家の単位から夫婦親子の単位に変更されたもの(現行戸籍)

 ・平成6年式(コンピュータ(電子)化されて横書きとなったもの

そうすると被相続人の出生から亡くなった時までの戸籍は何通にもなるということでしょうか。

生まれた時期にもよりますが、高齢者と言われる年代であれば概ね3通から4通になる方が多いと思われます。ただし、転籍、結婚や離婚という事実が複数になると戸籍の通数も増えるのが一般的です。

以前は、戸籍は本籍地にあたる市町村役場に交付申請をしなければならず、取得するのにかなりの手間がかかりました。しかし、令和6年3月1日から戸籍広域交付制度が始まり、お近くの市町村役場で出生から亡くなった時までの戸籍のすべてを取得できるようになりました。また、同年4月1日からは相続登記の申請義務化が始まりましたので、相続が発生した場合は、戸籍の取得を早めにされることをお勧めします。