遺言書を作成する場合、遺言執行者の指定をした方が良いのでしょうか。

遺言執行者とは、遺言内容を実現する役割と権限を有する人です。

結論としては、以下のとおり、遺言内容によって遺言執行者の指定の必要性は変わってきます。

⑴遺言執行者の指定が必要な場合

①婚姻外の子の認知を遺言によってする場合
認知とは、結婚していない男女の間の子を父親が自分の子であると認めることです。認知された子は父親の相続人となります。生前に認知できない事情があり、遺言で認知をするというものです。
遺言による認知の場合には、戸籍法第64条により遺言執行者が戸籍上の認知の届出をする必要があります。

②相続人の廃除・廃除の取消しを遺言によってする場合
特定の推定相続人から虐待を受けたり、重大な侮辱を受けたりした場合に、相続権を奪う相続人廃除の手続きは、生前でもすることは可能ですが、遺言による相続人排除もできます。遺言による相続人廃除の手続きは遺言執行者が行います。また、生前に相続人廃除を既に実行しており、その廃除の取消しを遺言書で指示する場合も遺言執行者の指定が必要です。
相続人廃除・廃除の取消しの申立ては家庭裁判所に行うことになります。

⑵遺言執行者の指定は必要的でない場合

遺言内容の実現において、相続人でもできる場合は、必ずしも遺言執行者を指定する必要はありません。例えば、遺言書に各相続人にどの財産を相続させるかが明確に記載されていれば、それを実現するために、預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し、分配、不動産の登記申請手続きなどを行うことになりますが、これらは相続人たちが協力すればできないものではありません。ただし、相続人の中に非協力的な方がいるなどの他、相続人が法律的な対応に不慣れで自分たちでは手続きをしそうにないケースであれば遺言執行者を指定しておくことを検討した方が良いでしょう。

遺言執行者を指定する場合、誰にすべきでしょうか。

遺言執行者には、未成年者や破産者でない限り誰でもなれます。遺言執行者が相続人と同一でも問題ありませんし、第三者でもかまいません。ただし、相続人の中から指定すると、遺言内容に不満を持つ他の相続人が反発する可能性も考えられますし、また、遺言執行者のすべきことは多岐にわたるので、指定された人が遺言執行者に就任しないと言う可能性もあります。遺言書で遺言執行者として指定されても就任する義務はありません。

相続人に負担をかけずに、遺言執行者を指定してスムーズに相続手続きを進めることが良いと思われるならば、士業などの専門家にご相談されたうえで、専門家を指定することを検討しても良いと思います。

遺言書に遺言執行者を指定する文例を教えてください。

以下の文例は、相続人である長男を遺言執行者として指定した場合のものです。

第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として長男○○○○を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
 ⑴ 預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払戻し
 ⑵ その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
3 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、第三者にその任務を行わせることができる。

まとめ

遺言書をご自身で作成する場合は、法律上の要件をクリアするとともに、遺言内容が明確でないと無効なものとなってしまいます。仮にその遺言書に遺言執行者を指定していたとしても、無効な遺言書の内容を実現することは不可能であり、結果として、相続人間で遺産分割協議を行わなければならなくなってしまいます。

自筆証書遺言を作成する場合は、文案ができたら専門家に見てもらうなど事前にご相談されることをお勧めします。