家庭裁判所に申し立てられる遺産分割の調停事件について、紛争となっている遺産額別の割合を教えてください。

ご相談者様からは、自分は相続人が揉めるほどの財産を持っていないという言葉をよくお聞きします。そこで、不動産はお持ちですか?とお聞きすると、名古屋市内に土地建物はあるが建物はもう古いから価値はない、預貯金なんて大した金額ではない、という回答が返ってくることが多いです。

最高裁判所「司法統計」によると、令和4年の遺産分割に関する事件は、12,981件、そのうち認容・調停が成立した件数は、6,857件でした。紛争となっている遺産額別の件数及び割合は、下の表のとおりです。

ちなみに、遺産分割事件とは、相続人間で遺産分割協議がまとまらず家庭裁判所へ調停・審判が持ち込まれた事件のことをいいます。

表を見ていただくと分かると思いますが、遺産額が1,000万円以下の件数は2,296件、割合は33.5%となっています。仮に遺産の預貯金は少額であったとしても、都市部にある土地の評価額は上がっており、そのような土地がある場合は、決して揉めるほどの財産がないとは言い切れないということはお分かりいただけると思います。

特に、不動産は預貯金と違って簡単に数字的に分けられるものではなく、どのように相続させるかは難しいところです。実際に不動産が絡んだ紛争は、家庭裁判所の調停事件でも簡単にはまとまらない傾向にあります。

相続人が揉めないようにするにはどうしたらいいでしょうか。

遺言書を作成することをお勧めします。遺言書があれば絶対に揉めないとは言えないかもしれませんが、被相続人(例えば、親)がどのような意図をもって財産を分けるのかを遺言書でまとめておけば、何もないところから相続人が遺産分割の話し合いを始めるよりは揉めるリスクを減らせるのではないでしょうか。

遺言書の作成方式には、公正証書遺言書と自筆証書遺言書があります。また、自筆証書遺言書には、令和2年7月10日から自筆証書遺言書を法務局(遺言書保管所)で保管する制度が始まっています。
自筆証書遺言書の法務局保管制度を利用される方は、年々増加傾向にあります。

公正証書遺言書と自筆証書遺言書の違い等については、下の表を参考にしてください。

遺言書を作成するのはまだ早いと思っているし、どのような遺産分けの内容にするか決めかねている。

ご相談者様に遺言書の作成をお勧めすると、上記のようなお答えが返ってくることが多いです。

作成する時期についてはご自身で判断されればいいことですし、当然、作成するとなったらどのような内容にすればいいのかは誰でも悩むことだと思います。

ご相談者様には、ご自身でじっくりと考えていただくことが大切とお伝えしますが、次の2点については実践されることをお勧めしています。

①エンディングノート(生前整理ノート)を作成して、どのような財産(負債を含む。)があるかを記載しておいてください。不慮の事故や病気で急に亡くなった時に、残された相続人は財産調査をする必要はなくなります。

②仮に遺言書を作成するお気持ちになったら、お盆休みや年末年始でご家族が集まった時に、遺産相続について話し合う機会を設けてみてください。どのような遺産分けの遺言書を作成するかのヒントが得られるかもしれませんし、揉める危険性が見えてくるかもしれません。