公正証書遺言を作成するについて、現在の預貯金残高は知られたくないのですが、それは可能ですか。
相談者の中には預貯金残高については知られたくないという方がいらっしゃいます。
お答えとしては、以下のことを相談者にお伝えして、残高を開示していただく方向でまずご検討いただきます。
①公正証書遺言を作成するには、遺言の目的である財産の価額によって公証人手数料(公証人手数料の詳細については、2月5日付けのブログをお読みください。)が決まること
②財産の価額がわからないと、遺留分(一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。遺留分についての詳細は、2月11日付けのブログをお読みください。)権利者がいる場合、その権利を侵害した遺産分けの内容になっていると、紛争に発展して、遺言の内容どおりに遺産分けができない可能性があること
③相続税対策のこと
上記のことを説明してもなお躊躇っている場合は、以下の説明に進みます。
④公証人が手数料を計算できるように、ご自身で通帳の残高が記帳されている部分のコピーを取って、封印して公証人だけが知ることができるように段取りをつけることでいかがでしょうか。
①から③を説明すればほとんどの方は預貯金の残高の開示はしていただけますので、④の説明に至るのは多くはありません。
よって、基本的には、公証人にも預貯金残高を知らせずに公正証書遺言を作成することは難しいと思われます。
公証人だけが残高を知るという方法でも公証人や、業務を受けてもらう法律専門家の士業の方には了解してもらえるのですか。
公証人は手数料計算ができますので問題ありません。公証人によっては、通帳のコピーを取るのを嫌がるのであれば、遺言者自身が書いた残高メモを差し入れてもらうことでも差し支えないという方もいらっしゃいます。
高齢者を狙った詐欺の報道をよく耳にしますし、プライバシーを守りたいという意識が働くのも理解できます。ATMなどに高齢者に対する詐欺被害への注意喚起の書面が貼られていたりする時代ですから、尚更、残高を教えても大丈夫かと心配されるのはやむを得ないことと思います。
法律専門家の士業としては、遺言業務に携わる場合、遺留分や相続税のことを考えない人はいないと思いますので、紛争予防等の観点からは聞いておきたいと思うところですが、依頼者の意向に沿えるようにいろいろ検討されるはずですから、本音をお話いただければ善処を尽くす専門家は多いと思います。