実家じまいを行うタイミングについて、経験を交えてご説明します。

実家じまいを行うタイミングのひとつとして、親が亡くなり相続が発生した場合があります。
空き家となった実家を相続すると、そこに住まなくても固定資産税などの税負担が生じるほか、適切に維持・管理する義務などがあります。
そのまま放置していると、住まいは劣化し、価値が下がるだけでなく、老朽化した屋根が落下して通行人に怪我を負わせるなどのトラブルを引き起こすリスクもあります。

【経験談】
私も親から相続した実家がありました。利用する予定はなかったのですが、すぐに処分することにためらいを感じて数年間そのままにしていました。
その間、固定資産税を払い続けるとともに、庭木が生い茂り、自分で何度も除草に通い、業者に伐採を依頼したりして管理をする必要がありました。
しかし、屋根瓦が落ちてきたり、猫が住みついて鳴き声がうるさい、蜂の巣ができて危険であるといった近隣の方からの苦情が寄せられるようになったのをきっかけに実家じまいを考えるようになりました。

実家じまいの方法について

一般的な実家じまいの方法については、以下のとおりになると思います。
なお、相続によって土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たすことで土地を手放して国庫に帰属させることができる、いわゆる相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日から開始された国の制度)については、ここではご説明を省略させていただきます。制度の概要については、法務省のホームページのURLを貼り付けましたので、タップしてご覧ください。
法務省のホームページ➡法務省:相続土地国庫帰属制度について

①現況で売却する。
 建物内の家財を処分し、建物と土地をセットで売却する。

②建物を解体して更地にして売却する。
 建物の状態が悪く売却が難しい場合や、土地の価値を最大限に活かすために建物を解体して土地を売却する。

③賃貸で活用する。
 売却や取り壊しをせず、リノベーションや修繕を施して賃貸する。

上記のいずれの方法についても、購入者や賃借人とトラブルにならないように不動産会社などの業者を通じて行うのが一般的な流れになると思います。

【経験談】
私は、上記の②を選択しました。きっかけとしては、近隣のお寺が駐車場を拡大したいとの意向があることを聞きつけ、買取の話を向けたところ、建物を取り壊し、更地にすることを条件にしてなら話を進めてもいいとの回答があったからです。
建物の築年数はかなり経っていたため、早速、家財を処分する業者、建物を解体する業者を探し、何社か見積を依頼しました。見積の結果は、業者ごとにかなりの差があって驚き、見積を取ることの重要性を改めて認識しました。
更地にした後は、ほとんどもめることなく、相応の価額でお寺に買い取ってもらうことができました。

上記の経緯から、土地の売買契約に関しては不動産業者を入れずに、司法書士に関与してもらって手続を進めることができたため、不動産業者に払う仲介料や手数料などはかからずに済みました。なお、不動産譲渡にかかる税金は、当然、別途負担が必要になります。

実家じまいの方法については、不動産の状態や立地条件などによって選択肢は変わってくると思いますし、また、不動産業者に依頼せざるを得ない場面も出てくると思います。
ただ、私が経験したように、まず近隣で買い取ってくれそうな方を自分で探してみるというのもひとつの手段といえると思います。

まとめ

今後、相続にまつわり、実家じまいが大きな課題になっていくと思われます。

誰も住まない実家を所有し続けると経済的な負担ばかりでなく、近隣の方にご迷惑をおかけすることにもなりかねません。
思い出が詰まった実家を処分するのは心苦しいとためらう方も多く、簡単に解決する問題ではありません。

だからこそ、家族でしっかり話し合い、専門家などの助けも借りながら、自分たちにとってベストな方法を選択することが大切と思います。

最後にひとつ付け加えると、現在の墓石を撤去して更地にし、墓地の管理者に使用権を返還するなどの、いわゆる墓じまい、についても検討される方が増えてきています。墓じまいを検討される場合も、まずは家族や親族と話し合いをされ、檀家になっているのであれば、お寺には丁寧に説明してトラブルにならないように段取りを踏んで決めていただくことが大切と思います。