公正証書とはどういうものですか。

公正証書は、公証人が作成する公文書のことをいいます。一般的に思い浮かぶのは、「遺言公正証書」という方が多いのではないでしょうか。一個人が作成した文書は、「私署文書(私文書)」といいます。自分で書く自筆証書遺言は、この「私署文書(私文書)」に当たります。

契約書については、法律などの定めにより、公正証書での作成が義務付けられているものがあります。
例えば、①任意後見契約、②事業用定期借地権設定契約などがあります。

上記のように、法律で義務付けられているもの以外は、公正証書にする必要はありませんが、公正証書にすることによるメリット(以下に記載した公正証書にするメリットの項目を参照してください。)を享受するために公正証書で作成する書類は多くあります。

例えば、一般例として、個人の権利義務に関するもので、①不動産売買契約書、②土地建物賃貸借契約書、③金銭の貸し借りの契約書(金銭消費貸借契約書)、④離婚の際の養育費・財産分与・慰謝料の取決めに関する契約書、⑤遺言書などがあります。

ただし、法令に違反するような内容の書類は公正証書で作成することはできません。

公証人とはどんな人ですか。

公証人は、原則として、裁判官や検察官あるいは弁護士として法律事務に携わった方で、法務大臣から任命された、国の公務である公証事務を担う実質的な公務員です。
公証人が具体的にどのような公証事務を行っているかを記載すると長くなりますので、日本公証人連合会のホームページのURL(公証事務 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)を貼り付けましたので、ご覧いただきたいと思います。

ちなみに、公証人は、全国で約500名おり、公証人が執務する事務所である公証役場は全国に約300か所あります。

公正証書にするメリットはなんでしょうか。

公正証書には、主に次の効力があります。最後の執行力は、とても強い効力です。

①証明力
公正証書は、公証人が当事者の本人確認、意思確認をして作成しますので、後に契約内容で紛争になっても裁判で有効な証拠になります(強い証拠力があります。)。

②安全性
公正証書の原本は、公証役場で保管されますので、紛失や改ざんのおそれもなく安全性が高いといえます。当事者には、正本や謄本が交付されます。

③執行力
金銭債務についての公正証書は、債務者(支払うべき人)がただちに強制執行を受けても異存はない旨の陳述(強制執行認諾条項)が記載されている場合、執行力(支払ってもらえない場合に、裁判所に裁判を起こすことなく、裁判所に強制執行の申立てを行えば、強制執行(債務者の財産の差押え等)をすることができる効力)を有します。

例えば、離婚の際の養育費・財産分与・慰謝料の取決めについて公正証書(離婚給付等契約公正証書)を作成しておけば、その支払いがされない場合には、公正証書をもって強制執行ができます。

一方で、私署文書(私文書)で契約書を作成していたら、相手方から支払ってもらえず、話し合いでは解決できない場合は、契約書を証拠として「お金を払え」という裁判を起こして、勝訴判決を得てからでなければ強制執行はできません。

よって、公正証書で作成しておけば、金銭債権の権利の保全において、とても強い効力(執行力=強制執行ができる効力)を発揮するということです。

公正証書を作成してもらうには契約当事者などの本人でもできるのでしょうか。

本人でも可能です。ただし、公正証書の作成を直接公証役場に依頼した場合、打合せも含め、平日の昼間しか開いていない公証役場に何度も出向くことになります。必要書類の不足や内容の整理がされていなければ、完成までに時間がかかります。また、公証役場によって混雑している時期には予約が取りにくいということもあります。

上記のとおり、仕事をしている方は日程調整を含めて労力が一定程度かかることを理解していただいた方がいいと思います。

公正証書作成に関しては、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家を通じて公証役場に依頼することができます。また、ご本人で行うにしても、時間や手間を少しでも省くために、専門家に一度ご相談されて、作成までの流れなどを聞いてから行うことをお勧めします。