自筆証書遺言書を作成するについて注意すべき事項を教えてください。

自筆証書遺言書の作成に当たっては、必ず守らなければならない要件は以下のとおりです。

① 遺言書の全文、遺言の作成日付及び遺言者氏名を、必ず遺言者が自書して、押印します。

② 遺言書の作成日付は、日付が特定できるよう正確に記載します。

※「令和6年2月吉日」という記載は、具体的な日付が特定できないため不可となります。

③ 財産目録は、自書でなく、パソコンを利用したり、不動産(土地・建物)の登記事項証明書や通帳のコピー等の資料を添付する方法で作成することができますが,その場合は,その目録の全てのページに遺言者の署名押印が必要です。

※平成31年1月13日以降、目録は自書しなくても上記の印字等で作成できることになりました。

④ 書き間違った場合の訂正や、内容を書き足したいときの追加は,その場所が分かるように示した上で,訂正又は追加した旨を付記して署名し,訂正又は追加した箇所に押印します。

以上は、民法968条で定められた要件ですから、これらを満たさないと遺言書としての効力が生じないことになります。ただし、この要件を満たした遺言書であっても、どの財産をだれに相続又は遺贈するかといった内容が不明確であると無効になってしまう可能性は高いです。

また、①押印するところはすべて実印を使うこと、②遺言書と目録はホチキス等でまとめた上、割印(契印)をしておくこと、③遺言書の改ざんや破棄を防ぐためにも、封筒に入れてしっかり保管することをお勧めします。

自筆証書遺言書を法務局に保管してもらえる制度ができたと聞きましたが、手続の概要を教えてください。

令和2年7月10日より、遺言書の法務局保管制度がスタートしました。

遺言書保管制度は事前予約制(電話、インターネットでも予約可能)です。保管してもらう法務局は、遺言者の①本籍地、②住所地、③所有する不動産の所在地を管轄する法務局の中から選択することができます。

保管申請にあたっての必要書類等は、①自筆証書遺言書、②保管申請書(あらかじめ記入して持参します。)、③遺言者の本籍及び筆頭者の記載のある住民票(マイナンバーの記載のないもので、発行から3か月以内のもの)、④本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)、⑤収入印紙(3900円)になります。

自筆証書遺言書と申請書の書き方には、注意点がたくさんあり、遺言書保管制度独自のルールがありますので、事前に法務局に確認したり、ホームページ(03 遺言書の様式等についての注意事項 | 自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp)06 申請書/届出書/請求書等 | 自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp)を必ず参照するなどしてください。

保管申請当日は、上記の必要書類等をそろえて、必ず遺言者本人が直接法務局に行く必要があります。専門家に自筆証書遺言書の作成支援や保管申請書の代理作成を委任した場合、その専門家に付き添ってもらうことは可能となっています。

遺言書の保管申請が受理されるかどうかは、法務局の担当者が細かくチェックするため当日は1時間以上かかることもあると聞いています。書き直しになる場合や必要書類等に不備があった場合は、また別の日に予約を取り直して再度足を運ぶことになるようです。

問題なく受理されたら、法務局から保管証が発行されますので、保管証はなくさないようにしっかり保管しておきましょう。

法務局の保管制度は、公正証書遺言を作成するより手数料も安く済むのでお勧めということでしょうか。

手数料はたしかに安いですが。法務局の担当者のチェックは,民法の定める自筆証書遺言書の形式に適合するかについて,外形的なチェックであり、遺言書の有効性を保証するものではありません。公正証書遺言は、裁判官や検察官を務められた法律の専門家である公証人が作成するので、後に有効性が問題になる可能性は極めて低いといえます。

また、保管制度は、遺言者が保管申請する際に希望すれば、法務局(遺言書保管所)が遺言者の死亡を確認したときは、法務局(遺言書保管所)は遺言者があらかじめ指定した対象者に、遺言書を保管していることを通知することになっており、これはメリットといえます。

それと、公正証書遺言書や法務局保管制度を利用した自筆証書遺言書は、いずれも家庭裁判所での検認手続はいらないというメリットがあります。

いずれにしてもメリット、デメリットはどちらにもありますので、専門家にご相談されることをお勧めします。

自筆証書遺言書の参考例を示してもらえないでしょうか。

あくまでイメージを持っていただくためにアップしたものということをご理解ください。

法務局の保管制度を利用する場合は、遺言書はA4版の用紙を使用して、上部余白5ミリ以上、左余白20ミリ以上、右余白5ミリ以上、下部余白10ミリ以上が必要になるので気を付けてください。